2014-03-19 22:16

クリミアに見る憲法の限界

ウクライナのクリミア自治区が住民投票を実施し、97%が「独立」を選択したためクリミアは独立を宣言、欧米各国が反対する中で、クリミアから併合を求められているロシアがそれを承認した。欧米はロシアに対する制裁を発動し、日本も渋々検討を始めたらしい。

この問題は複雑で軽々なことは言えないが、アメリカやEUが「国際ルール」を理由にロシアを批判することにあまり良い印象は受けない。アメリカやEUは、国際ルール遵守やウクライナの安定を求めているのではなく、自分達の国益を優先している様にしか見えない。

正義者面してロシアに制裁する姿に、大国のエゴを感じてしまうのだ。そして、「欧米が動くのに日本だけが何もしないわけにはいかない」、なんて後ろ向きな理由で制裁に参加する日本もいただけない。もっと言えば、日本はロシア制裁に参加するべきではない。

ロシアは、近隣諸国にあって貴重な非反日国家だ。プーチンにいたっては親日的ですらある。北方領土問題を解決し、日露平和条約締結を悲願としている。そのプーチンは今年訪日する予定だが、制裁に参加すればそれもどうなるか分からなくなる。

エネルギー問題も重要だ。日本はロシアから天然ガスを輸入している。制裁に参加するのなら、ロシアのガス供給停止リスクに備えねばならない。アメリカにシェールガス優先輸出を約束させるか、国内原発の再稼働に目処をつけてから制裁に踏み切るべきだ。

ロシアとの関係構築は国益に資する。欧米のエゴに巻き込まれ、我が国の国益を犠牲にしてまで歩調を合わせるべきではない。中国みたく静観していればよろしい。

さて、このクリミア問題を巡る欧米及びマスコミの反応について、どうにも納得いかない点がある。

欧米が制裁にまで踏み切った理由に、「クリミアの住民投票はウクライナ憲法に反しており無効」というものがあることだ。日本のマスコミも総じて同意見で、「ウクライナ憲法に違反」「ロシアの軍事介入は許せぬ」「日本も制裁に参加すべき」などと報じられている。

で、「ウクライナ憲法違反」がよく分からない。いや分かるけど、マスコミも有識者も、誰も異を唱えないことが分からない。

安倍内閣の憲法改正や集団的自衛権の問題について、マスコミやその同志らは繰り返し安倍総理の憲法観を批判してきた。「憲法は国民が権力(政府)を縛るもの」だから、「安倍内閣が憲法解釈を変更するなら立憲主義の否定である」、と。

そしてクリミア自治区は、独立賛成派が住民投票で97%を占めた。まさに住民の総意だが、憲法違反を理由に欧米諸国は無効を主張している。ウクライナ憲法では、「国境変更には国民全体の住民投票が必要」と定めているからだ。でも、おかしくないか。

「憲法は国民が政府を縛る」はずなのに、クリミアの住民は明らかに憲法によって縛られている。憲法は国民が政府を縛るものと言ってきたマスコミが、どうして何の疑問も提起せず欧米に追随するのか。

確かに、クリミア自治区はウクライナの一地域に過ぎない。しかし、自治区の名の通り、単なる一地区ではなく独立性の高い地域で、地区と言いながらも国家的性質を併せ持つ。その地域の住民が独立を望んだとき、杓子定規に無効と即断してもよいものか。

この問題は、評価者のさじ加減一つで見方は180度変化する。ウクライナにも、クリミアにも、ロシアにも、欧米にも、それぞれの正義があり誰が間違っているとは言えない。そして、このことは所詮は人の創り出した「憲法」の限界を示してもいると思う。

クリミアの街は、独立を祝う人々でお祭り騒ぎらしい。彼らに、「憲法違反だから不許可」と言っても無意味だろう。戦争は互いの正義が衝突して発生する。欧米の制裁、日本の追随、マスコミの同調、これらは正義の衝突を煽る危険で愚かな行為に見える。

どんな憲法も、過去に誰かが作ったものだ。クリミア独立宣言は、まさに新たな憲法を生み出す社会の胎動ではないか(今回はロシア編入ですが)。クリミアは、ウクライナ憲法で自分達は縛られないと思っているだろうし、権力を縛る道具に使いたいとも考えていまい。

そんなクリミアに、「憲法違反だから独立はならぬ!」と説教しても、それは血の通わず実効性も無い、単なる机上の空論とか思えず、欧米や日本マスコミらの「憲法違反」を聞く度に違和感を覚える。



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テーマ:国家論・憲法総論
ジャンル:政治・経済

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