2013-01-31 20:18

教師に向けられる無償の信頼

早期退職を決めた小学3年生の担任教師が、とある事件をきっかけに退職を撤回したそうだ。事件を報じたのは朝日新聞で、その心温まる話は是非とも紹介しておきたい。教師とは何か、生徒とは何か、早期退職を決めた教師はどうか考え直していただきたい。

 

朝日:残る先生 別れが名残惜しく決断

http://www.asahi.com/area/saitama/articles/MTW1301301100008.html
◇お別れ会当日「やめません」/児童「やったー」「よっしゃー」
 「やっぱり先生やめないんだって!!」

 さいたま市の小学校に通う3年生の男子児童は、帰宅すると小さくガッツポーズをしながら、真っ先に母親に伝えた。普段はあまり話をしない子だが、この日ばかりはうれしそうに学校での…

 

記事は有料版でなければここで終了。しかし、no-risuは紙面で読んでいるので問題ない。記事の全容は以下に説明しよう。

 

埼玉県の小学校で、60歳の担任教師が早期退職を決めた。退職金の減額が決まり、施行前に辞めれば70万円お得だからだ。退職を知った生徒達は、「新年会」と称してパーティーを催した。しかし、新年会はウソで、実は退職する担任を労うお別れ会だった。

 

生徒達は教室を飾りつけた。そして、教師が席を外した隙に、「新年会」の文字を消して「お別れ会」に書き換えた。このサプライズに教師は心を打たれ、早期退職を撤回、最後まで辞めないと生徒に伝えた。生徒は「よっしゃ!」と心から喜んだ。そんな話だ。

 

似たような経験はno-risuにもある。定年退職する担任、任期が終了する教育実習生の先生に、サプライズパーティーを企画・実行した。今でも覚えているが、教師は例外無く感動して涙をした。企画した側も、女子を中心に笑顔で泣きじゃくった。

 

プレゼントも用意した。寄せ書きとか工作とか、骨董屋に持ち込んでも1円の値もつかないガラクタだ。しかしそれこそプライスレス。教師しか手に入れることの出来ない、金に換えられない価値を持った宝物だ。嬉しくないわけがない。

 

お別れ会やプレゼントには、生徒が教師に寄せる無償の信頼がある。教師個人の能力は重要でなく、教師であるが故にそれだけで生徒が無条件に寄せる信頼がある。自分達を育て導いてくれる、親以外では唯一の大人、それが学校の先生だ。

 

no-risuの高校の担任は、決して有能な教師ではなかった。しかし、卒業生の多くは進路が決まると報告に足を運んだ。その担任は、受け持ちクラスの生徒の進路を本気で心配してくれていたからだ。浪人生も、一年越しに進学先の報告をしたものだ。

 

今回、サプライズパーティーを企画した生徒は小学3年生だ。早期退職の意味も分かっていないだろう。ただ、大好きな先生を喜ばせたかった。その気持ちが通じて先生は早期退職を撤回した。あと2ヶ月一緒にいられる、それだけで大喜びする小学生。

 

教師とは、何と幸せでやりがいのある職業だろうか。子供達が自分に寄せる無償の信頼。この喜びは、70万円で売り渡せるほど安いわけがない。早期退職を撤回しない教師に言ってやりたい。「お前は70万円以下の価値しかない人間」だと。

 

違法ではないのだから、胸を張って70万円をゲットすればいい。生徒の無償の信頼を踏みにじって得た70万円で、高給寿司でも肉でも食えばいい。旅行でもすればいい。孫に小遣いでもやればいい。ただ、二度と教師を名乗るな。

 

 

 

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コメント

No title

こんばんわ

この問題の背景には、早期退職プログラムを設計したお役人が、色々と事情があって苦心されたのでしょうが、現場の実態や仕事の本質をあまり重視しなかったことがあると思います。まあいわゆるお役所仕事って言うやつですなw
  1. 2013-01-31 21:06
  2. URL
  3. ・Trinity #79D/WHSg
  4. 編集

No title

To pomponetさん
こんばんは。

本件は、本来問題と呼べるような問題ではありません。官民比較で出し過ぎていた退職金を減額するだけで、実施時期に文句をつける余地など無いはずです。

もちろん、いきなり減額される教師に同情する余地はありますが、そんなものは跳ね返すだけの矜持が教師にはあるはずなのです。あるべきなのです。

「お役所仕事」という批判が何を意味するかを考えれば、早期退職する教師もお役所根性と批判されても仕方ありません。

  1. 2013-01-31 21:36
  2. URL
  3. no-risu #79D/WHSg
  4. 編集

No title

こんばんは。

この話の教師は生徒に愛されて幸せですよね。
一方で今日の朝日新聞に掲載されていた授業妨害が原因で自殺した広島県の高校教師の話を見ると複雑な気持ちを抱きます。
生徒による授業妨害と向き合い、1年間で50回以上もの家庭訪問を行って一人の中退者も出さなかったが翌年度には状況が悪化し、矢折れ刀尽きたように鬱病を発症し自殺した教師の話でした。

この教師まではいかなくてもhttp://www.iza.ne.jp/izaword/word/%25E5%25AD%25A6%25E7%25B4%259A%25E5%25B4%25A9%25E5%25A3%258A/" class="keyword">学級崩壊やモンペ対策等の様々な難題に取り組んできたのに退職3か月前というまさに最後の最後で退職金減額という仕打ちを受けて心が折れてしまった方もいるのではないでしょうか。現職の教師の話を聞くと、外部の人間が思っているより過酷な状況のようです。現在の教育現場では心ある教師ほど日常生活の大半を費やしても足りないくらいの負担があるとのことでした。クラブの顧問などは休日に出勤してもほぼ無給ですしね。

蛇足かもしれませんが、民間企業の場合は定年退職しても雇用保険の失業給付を受給できる可能性があります。公務員は雇用保険の対象外なので失業給付を受給することはできません(退職金に失業給付部分も含まれているという解釈のよう)。今回の官民比較はこのあたりも考慮しているのだろうかという疑問は持っています。
  1. 2013-01-31 22:37
  2. URL
  3. nanahoubijin #79D/WHSg
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No title

no-risuさん、こんにちは。
かけこみ退職はなかなか見苦しいところですが
矜持ではメシを食えないところです。

教師も悲しいかなhttp://www.iza.ne.jp/izaword/word/%25E3%2582%25B5%25E3%2583%25A9%25E3%2583%25AA%25E3%2583%25BC%25E3%2583%259E%25E3%2583%25B3/" class="keyword">サラリーマンですし。

今回の発端は、人事院の民間退職金調査によるらしいですが
この5年間の間に民間の退職金が大きく減った理由に興味があります。
  1. 2013-01-31 23:11
  2. URL
  3. azarash #79D/WHSg
  4. 編集

No title

おはようございます。

2日ほどエントリーがなかったので、心配しておりました。

いいお話ですね。

昨今、すべてを貨幣価値に換算できると信じる新自由主義が蔓延しております。こういう話に心が温まってしまうのも、私自身がそういう考えに知らず知らずのうちにhttp://www.iza.ne.jp/izaword/word/%25E6%25B5%2581/" class="keyword">流されていたのだ、と改めて気づかされました。

  1. 2013-02-01 09:11
  2. URL
  3. toshita1967 #79D/WHSg
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No title

To nanahoubijinさん
こんばんは。

仰るように、環境に恵まれず精根尽きた不遇な教師も早期退職者に含まれていたかもしれません。精神を病む教職員の多さは私も知っているので、エントリーでそのあたりに言及しなかったのは配慮に欠いていると批判を受けても仕方の無いところです。

ただ、それを考慮してもやはり論旨の大筋は変らなかったと思いますので、そこはご容赦いただきたいと思います。

退職金と雇用保険における官民比較ですが、確かにその通りですね。定年退職後の雇用保険給付についても、それを含めて比較するのかどうか、きちんと議論するべきだと思います。

まあ、おそらくは含めず比較するべき、と結論付けられるでしょうけど。公務員には身分保障がありますからねぇ。

  1. 2013-02-01 20:22
  2. URL
  3. no-risu #79D/WHSg
  4. 編集

No title

To azarashさん
こんばんは。

武士は食わねど高楊枝、とも申します。70万円くらい損しようとも矜持でチョークを掲げて見せろと。

退職金が減った理由は私も知りたいですね。上がる要素が無いのだから減るのは当然とも思いますが、気になるところです。ひょっとしたら公表されているのかもしれませんが、ちょっと探す余裕がありません。

  1. 2013-02-01 20:27
  2. URL
  3. no-risu #79D/WHSg
  4. 編集

No title

To toshitahttp://www.iza.ne.jp/izaword/word/1967/" class="keyword">1967さん
こんばんは。

私はただの社会人なので、更新できない日も普通に生じます。特に最近は忙しくなる一方ですので、こういうことは度々起こると思います。

そもそも、これまでのペースが奇跡的なんですよ(笑)。出来るだけ維持したいとは思っておりますが。

さて、本件は良い話ですよね。別に珍しくも無い話のはずなんですが、しみじみと心にしみましたよ。

  1. 2013-02-01 20:32
  2. URL
  3. no-risu #79D/WHSg
  4. 編集

No title

>ただ、二度と教師を名乗るな。


このあたりですね。受け止める方たちの温度差が一番顕著に出てくるのは。

現行の仕組みが「公務員」枠にあるのですから仕方のないことだとは思いますが、義務教育課程の教師は、少し違った区分で扱うという目線が必要だと思います。

なぜかって、説明の必要もありませんね。社会進出前の子供たちへの影響が大きすぎる立ち位置にいるからです。特に小学校の場合、専任と担任とが分かれていますから、児童の失望も大きなものになるでしょう。
まあ、誰もが強い子に育っているのなら問題はないのですが。

割り切りは大事です。しかしながらkistoryの考えとしては、教師とは準公人です。
一般人が麻薬云々で逮捕されることと、著名人になってしまった芸能人がそれをしてしまうとでは、かなり意識が(一般人の)違ってくるはずです。

そうした私人/公人のちがいは別にワールドワイドであるか否かではなく、受信側の姿勢で決まると思っています。ネット接続制限が学校規定でどうあるかは可変ですので度外視しますが、担任の存在は児童/生徒にとって、ひと昔の「ノーメンクラトゥーラ」に近いものなのです。

何が言いたいのか錯乱してしまいましたが、そりゃ教員だって給料ありきで授業やその準備してんだろ、という視線と、子供たちへの悪影響とを、さて、どちらを優先させるべきなのか、悩んでしまうところです。

乱文失礼致しました。難しいテーマです。
でももしかしたら、冷徹に割り切る姿勢を学ぶことで、とても強い子たちが育っていくのかもしれませんねw
  1. 2013-02-02 12:17
  2. URL
  3. kistory #79D/WHSg
  4. 編集

No title

To kistoryさん
こんばんは。

エントリー最後の一文は強く書きすぎたかもしれません。

さて、仰りたいことはよく分かります。

私は教師を公職と見て、「公」に尽くすべき教師は少々の「私」は言われずとも犠牲にして当然で、しかも教師はそれを強いられるまでもない誇りある職業だと考えています。

一方で、教師といえども一人の人間、「公」より「私」を優先したっていいじゃないか、と考える人もいるわけですね。で、どうも今回このブログには、後者からのご意見を多く頂戴しています。

これはもう価値観の違いなので、どこまでいっても平行線になりかねませんねぇ。

  1. 2013-02-02 19:20
  2. URL
  3. no-risu #79D/WHSg
  4. 編集

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