2013-10-18 21:32

解雇特区の断念は自民党の策略?

自民党は16日、経済政策の目玉の一つであった「国家戦略特区」の「雇用規制緩和」を断念する意向を固めた。厚生労働省の反発に配慮したらしいが、特定秘密保護法案に続き戦略特区も見直しとか、自民党らしからぬ物わかりの良さが不気味だ。

ただ、骨抜きにされた特定秘密保護法案と異なり、解雇特区構想が頓挫したことは素直に喜ばしい。安倍総理は「解雇特区」の呼び名に不快感を示し、「レッテル張りだ」などと抗議していたが、どう考えても解雇特区でありブラッ区であった。

特区には、「①解雇ルールの明確化」「②有期雇用の特例」「③労働時間ルールの特例」、労働条件に係る3つの規制緩和が掲げられていた。

「①解雇ルールの明確化」とは、解雇の条件を事前に契約書面で「明確化」させることを意味する。解雇条件を労使で決定できることから、特区推進派は「労働者にもメリット」と説明している。しかし、常識的に考えて、労働者が解雇条件に口出しできるとは思えない。

現実的には、会社がリストラしやすいように解雇条件を策定し、労働者は示された条件を黙って承諾する他ないだろう。

「②有期雇用の特例」とは、労働者の自主的な権利放棄を意味する。非正規労働者は、5年働けば無期雇用(≒正規雇用)に昇格できる。逆に言えば、会社は非正規を非正規のまま雇えるのは5年で、それ以上は正社員として雇わなければならない。

正社員を増やしたくない会社は、5年で非正規労働者を切り捨てるわけだが、5年も経験を積んだ従業員を切って新人を雇うのも躊躇われる。会社は、労働者をいつまでも薄給でこき使いたいのだ。そこで「特例」の出番である。

会社は労働者に非正規を強要することは出来ないが、労働者が自主的に正社員の権利を放棄してくれるなら、こんなにありがたい話はないだろう。ただし労働者は悲惨だ。不安定かつ脆弱な福利厚生で、非正規のまま飼い殺される。

「③労働時間ルールの特例」とは、いわゆるホワイトカラー・エグゼプションで、不払い残業の合法化を意味している。残業するもしないも労働者の勝手、自由に仕事していいですよ、との売り文句だ。確かに、ホワイトカラー・エグゼプションとはそういうものだ。

しかし、ホワイトカラー・エグゼプションは研究職や農業や管理職など、就業時間に縛られることが馴染まない職種・役職を対象とした制度だ。ところが、自民党案では「収入水準」が適用の判断基準とされ、しかも収入水準の具体的金額は明かされていない。

例えば、年収400万~500万あたりにラインを引けば、外食やアパレルなどの名ばかり店長はサービス残業が消滅する。それこそ、ワタミのように365日、月月火水木金金でこき使っても、解雇特区では合法になる。残業は社員の意思、会社は責任を問われない。

つくづくろくでもない特区構想だが、これはno-risuが労働者側の人間だからそう思うだけで、銭ゲバ経団連にしてみればバラ色の規制緩和であり、血も涙も無い外資からみれば普通の労使関係と映る。経営側は、厚労省の妨害に怒り心頭だろう。

本件をごく単純に説明すると、「政府の規制緩和案に既得権益を守る厚生労働省が抵抗した」、という構図になる。つまり、厚生労働省は抵抗勢力だ。通常、マスコミは規制緩和を無条件に善とし、刃向かう省庁は抵抗勢力として批判する。

最近の事例では、TPPに反対する農林水産省に対して、「農協や生産者の既得権益を守っている」、「農林水産業界の新陳代謝や成長を阻害している」、「シロアリ官僚による省益優先(省益が何なのかは不明)」、などとさんざん批判していた。

ところが今回、既得権益を守った厚生労働省を「抵抗勢力」呼ばわりしたメディアは皆無である。マスコミやお仲間の知識人共は、生産者を守る農水省を批判したのだから、労働者を守る厚労省も批判するべきだ。残業代や身分保障は、厚労省や労働者の既得権益だろう?(笑)。

既得権益とか抵抗勢力とか、それは一部の人々の立場から見た都合に過ぎない。マスコミや知識人や政治家が口にしたとき、私達はその意味についてもっと考える習慣を身につけねばならない。その重要性は、本件を見れば明白だろう。

さて、自民党の戦略特区断念には、何らかの裏事情があったように思えてならない。戦略特区は、TPPを見越したアメリカの要望を反映した規制緩和でもあった。アメリカの政局が混乱する隙を見て、「今でしょ!」と素早く廃案に持ち込んだ可能性がある。

どうして自民党が廃案を望むか?、言わずもがな、日本の労働者と国益を守るためだ。証拠は無い。自民党支持者であるno-risuの好意的推察に過ぎないが、安倍自民ならそれくらいの戦略を立てていても不思議でない、と考えるのは甘過ぎるだろうか。



読売:雇用規制緩和特区、断念へ…厚労省の反発に配慮
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20131016-OYT1T01460.htm 
政府は16日、成長戦略の柱に位置づける「国家戦略特区」で導入する規制緩和について、焦点となっていた「解雇ルール」など、検討してきた雇用に関する全3項目を見送る方針を固めた。
" 安倍首相は16日、首相官邸で菅官房長官、甘利経済再生相、新藤総務相と協議し、こうした方針を大筋で了承し、詳細を詰めるよう指示した。
 地域を限定して大胆に規制緩和を進める「国家戦略特区」での緩和項目を巡っては、政府の国家戦略特区ワーキンググループが選定作業を進めてきた。"
 雇用については、外国企業や新興企業が進出しやすくすることを目的に、〈1〉労働者と経営者間で解雇の条件を事前に契約書面で決める「解雇ルールの明確化」〈2〉有期契約で5年超働いた労働者が本来、無期契約を結べる権利をあらかじめ放棄できる「有期雇用の特例」〈3〉一定水準以上の収入がある人の残業代をゼロにできる「ホワイトカラー・エグゼンプション」導入を視野に入れた「労働時間ルールの特例」――を提案した。
 いずれも労働者の権利保護を掲げた労働契約法などを根本から覆す内容で、厚生労働省は「労働規制は全国一律でなければ企業競争に不公平が生じる」などと反発してきた。野党からも「解雇特区」などとして、臨時国会で政府に対する攻撃材料にしようとする動きが強まっていた。


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