2013-11-06 22:00

食品偽装:被害者は消費者だけか?

全国のホテル等からカミングアウト続出の食品偽装問題について、菅官房長官は6日の記者会見で「消費者の信頼を著しく損なうもの」と遺憾の意を表明した。食品偽装に手を染めた飲食店は被害者、騙された消費者は被害者、分かりやすい構図である。

しかし、食品偽装の被害者には、消費者と別の母集団が存在する。政治家やマスコミは言及せず、消費者も目を向けず、立場が弱く情報発信力も無いがために物言えぬ被害者。騒動の裏で、騒動が始まる前から堪え忍んできた人々。

それは「生産者」だ。食品偽装による生産者へのダメージは計り知れない。

まず、金銭的被害が発生する。バッグや時計など、偽ブランド品の問題と同じだ。生産者の長年に渡る努力で築き、守り続けるブランドが生み出す付加価値は、全て邪な偽装業者の懐に収められる。市場が食われたであろう部分も考慮すれば、金銭的被害は甚大だ。

さらに、ブランド力に対する被害も深刻だ。一連のメニュー偽装では、全て表示より格下の食材が用いられている。先日発覚した近鉄旅館など、オーストラリア産牛肉に脂肪を注入した成形肉を「和牛」と偽っていた。それら偽物の味を、消費者はどう感じたか。

「期待したほどではなかった」「思っていたより普通」「わざわざ高い金出して食べるほどでもない」

産地の生き残りをかけたブランド・信用を守るため、そして何より消費者に「美味しい」と喜んでもらうため、文字通り人生をかけて高品質食材の生産・提供に心血を注ぐ「プロ」に、それらの評価がどれほど屈辱や悲しみを与えただろうか。

阪急阪神や小田急などは、宿泊客らに返金措置をとっている。中には、近鉄の様に「料金に見合うサービスはした」と返金しない事業者もおり、阪急阪神や小田急などはそれよりマシな対応と言える。しかし、生産者に対する補償は全く話に出てこない。

魚沼産コシヒカリが脚光を浴びたとき、全国の小売店には魚沼産コシヒカリが並んだ。鹿児島県産黒豚も同じだった。今なら国産ウナギが分かりやすい。それらは全て、流通量が生産量を遙かに超えている。つまり、「偽物が横行している」ってことだ。

魚沼産コシヒカリは、ブレンド米事件としてそこそこ話題になったが、ブレンドした業者が処罰されただけで生産者への補償は無かった。大手小売店も分かっていたはずなのに、責任の全てを農協や米屋に押しつけて、「うちも騙された」と被害者面した。

いつもそうだ。食品偽装が発覚しても、事業者は決して生産者には補償しないし謝罪の言葉すら無い。増長が目に余る「消費者様」やマスコミにはペコペコするが、立場の弱い生産者にはケツを向ける。生産者が虐げられても、社会は関心を示さない。

菅長官は、「事業者は食品表示法を甘く見ていたのでは」と苦言を呈した。決まりが無ければやって良いことと悪いことの区別もつかないのか?。違うだろう?。ホテルら事業者が甘く見ているのは、法律ではなく生産者の気持ちと消費者の舌だ。

はっきり言って、偽装業者に対する政治家やマスコミの追及は手ぬるい。生産者に対する過失が考慮されていない時点で減刑されている。そんなだから、問題を軽く見て「偽装ではなく誤表示」と言い張ったり、「返金はしない」と開き直るバカが後を絶たない。

私達は、この問題の本質をもっと考えるべきだ。メニュー偽装に矮小化させず、この国における歪んだ「食」の構造と、脆弱な国民の意識に踏み込まねばならない。構造と意識改革の重要性は、何も経済とデフレマインドの問題だけではないのだ。



産経:菅長官、食材偽装に「事業者は食品表示法を甘くみていたのでは」
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/131106/plc13110612420010-n1.htm
 菅義偉官房長官は6日午前の記者会見で、全国のレストランなどで相次いでいる食品の不適切表示について「消費者の信頼を著しく損なうもので遺憾だ」とした上で、「事業者は食品表示法を甘く考えていたのではないか。同法に基づいて厳正に対処していくことが警告を発する意味でも大事だ」と述べた。


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