2013-11-12 21:41

日本酒の合法的な偽装表示

神戸市灘区の酒造会社「富久娘酒造」が、「特定名称酒」に醸造アルコールを添加したり規格外加工用米を使用していたことを白状した。ホテルらは相次いで偽装表示を公表しているが、酒造会社は初めてのケースで、極めて異例の告白と言える。

異例と言うのは、日本酒業界は昔から偽装表示が横行しているからだ。特に大手メーカーの偽装は悪質で、今回の富久娘酒造はルール違反を犯していたが、大手の場合は合法的な偽装工作で消費者を欺いている。それが日本酒の文化と慣習だ。

そんな不誠実な会社がゴロゴロする業界にあって、自ら偽装を白状する酒造会社が現れるとは驚きだ。もっとも、驚きはするが褒めはしない。富久娘酒造は「偽装ではなく勘違い」などと弁明している。明らかに嘘、ホテルの前例に学ばぬ愚かな会社だ。

さて、日本酒の表示の話だ。食品表示には様々な情報が載せられているが、消費者にとって日本酒ほど不親切な表示はない。冒頭で「特定名称酒」と書いたが、これを知っている人も少ないだろう。「純米」とか「吟醸」など、日本酒の種類のことだ。

日本酒の種類には、大吟醸、吟醸、純米大吟醸、純米、本醸造、普通(清酒)などがある。みなさんは、これらの違いが分かりますか?。たぶん、ほとんどの人は知らない。だいたい、コメで作る日本酒に、どうして「純米酒」なんてカテゴリーがあるのか(笑)。

日本酒のラベルを見ると、まずはドドンと商品名が書かれていて、次に目立つのが「吟醸」などの種類表示で、隅っこに小さく「精米歩合」や「日本酒度」などが書かれている。「精米歩合」や「日本酒度」は専門用語で、これも多くの消費者は意味を知らない。

ちなみに、精米歩合は原料の酒米をどれだけ磨いた(削った)かを表す。精米歩合60%と書かれている場合、知らなければ60%を削ったと勘違いしそうだが、40%削って60%にしたことを意味する。削ったコメは「米ぬか」扱いで、昔は廃棄されていた。

日本酒度は「甘口辛口」の度合いを意味している。数字がプラスなら辛口、マイナスなら甘口だ。例えば、「日本酒度+15」なら、その酒はかなりの辛口になる。が、実にわかりにくい。甘口か辛口かくらい、最初から表示してくれればいいだろうに。

さらに表示を見ると、当たり前だが「原材料」が書かれている。日本酒の原料など「米」と「米麹」と「水」に決まっているが、純米酒以外は「醸造アルコール」や「水飴」も添加されている。酒造会社にも言い分はあるだろうが、基本的に添加は「水増し」が目的だ。

醸造アルコールの添加に関しては、「端麗な口当たりになる」とか「圧搾前の添加で芳香が高まる」とかもっともらしい言い訳もあるけれど、だったら堂々と「アル添してます!」とアピールすれば良い。でもしない。後ろめたいと思っているからだろう?。

そりゃ後ろめたいに決まっているさ。原料以外の何かを混ぜれば、それはもう日本酒ではない。日本酒に近い別の何かだ。リキュール類の日本酒風飲料なのに、「本醸造」なんてさも本物っぽい名前で消費者を騙しているのだから。

通常、私達が目にする日本酒のアルコール度数は15度程度だが、できたての日本酒(原酒)のアルコール度数は20度程度と高い。これでは飲みにくいので、水で薄めて適度なアルコール度数に落とす。水で薄めれば、酒の量はいくらでも増やせて儲かる。

がめつい酒造会社は必要以上に水で薄め、水っぽくなった酒を誤魔化すために、醸造アルコールをぶち込み、水飴を添加して味を整える。どう考えても消費者に対する裏切りだが、なんと日本酒の世界では合法だ。恥ずべき慣習である。

つまり、純粋に「日本酒」が飲みたければ「純米酒」を選ぶしかない。ところが、その純米酒すら粗悪品が横行するようになった。もちろん合法的に。

もう10年以上前になるだろうか。いつ頃からか、「米だけで作ったお酒」なる安価な純米酒もどきが世に出回り始めた。精米歩合など、純米酒としての基準を満たさない純米酒の代替品だが、酒造会社は「米だけで作りました!」と宣伝して消費者を欺いた。

近年になり、格安の「純米酒」までもが出現した。規制が緩和され、基準に満たない酒でも純米を名乗れるようになったからだ。簡単に純米酒を名乗れるのだから、酒造会社にとっては美味しい規制緩和である。しかし、消費者にとっては不利益な改悪だ。

日本酒の表示は、今も昔もいかに消費者を騙すかが主眼に置かれている。見てくれだけ良くしてイメージ偽装する一方で、正確な情報を伝えるとか親切な表示に工夫を凝らすとか、そういった消費者目線の改善は皆無だったと言っていい。

最近、規制緩和されていない大吟醸にまで格安品が出現し始めた。どんなカラクリか知らないし、知りたくもないが、そういう業界の不誠実な行為は、確実に消費者の日本酒離れを促進させる。日本酒離れとは、誇るべき日本食文化の衰退だ。

富久娘酒造の不祥事は、日本酒の体質を変えるチャンスになり得る。ホテルのメニュー偽装の様に、どんどん飛び火して大事になればいい。自分達で改善する意思と能力が無いのなら、外部要因に活路を求めるしかないだろう。

合法的偽装表示を見直し、日本酒のありのままの姿をさらけ出せ。国民は怒るかも知れないが、怒られないほど見放されてからでは遅すぎる。現在の表示に批判の声が上がらない時点で、日本酒業界はもっと本気で危機感を持つべし。



毎日:不適切表示:富久娘酒造の純米酒など38銘柄 自主回収へ
http://mainichi.jp/feature/news/20131112k0000m040080000c.html
 神戸市灘区の酒造会社「富久娘酒造」は11日、純米酒などの「特定名称酒」に醸造アルコールを使用するなどの不適切表示があったことを明らかにした。規格外の米を使用した本醸造酒や吟醸酒もあったといい、対象は38銘柄で、期間や出荷数は調査中。同社は今年10月以前の製造分を自主回収する。
 同社によると、醸造アルコールは現場の担当者が品質を一定にするため、純米酒に混ぜることがあった。本醸造酒などには酒米の一部に農林水産省の規格外の加工用米を使用。こうじを作る際、誤って混ぜていたという。
 同社は今年1〜10月、特定名称酒を一升瓶換算で約25万本製造している。小島久佳社長は「偽装するつもりはなかった。会社として管理不足だった。お客さまの信頼を裏切り、大変申し訳ない気持ちでいっぱいだ。二度と起きないようにしたい」としている。



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