2015-09-07 20:15

訴訟は自主避難者を救済しない


福島原発事故の避難者による、国と東電を相手取った集団訴訟について、8月25日に第3次訴訟がさいたま地裁に起こされた。今回は7世帯22人、内21人は自主避難者だ。1次2次合わせると20世帯68人になったが、全体で見ても自主避難者が多い。

原告に自主避難者が多いのは、強すぎる被害者意識が主な理由と思われる。避難者と比較して補償が薄いことも関係しているだろうが、手厚い補償を求めるのも被害者意識ゆえだろう。被害者意識の強い人間は、弁護士にとって絶好のカモである。

「どうして私がこんな目に」と嘆く自主避難者に、人権派弁護士が「国と東電のせいですよ」「あなたは何も悪くないですよ、悪いのは国と東電ですよ」、と優しく言い寄り、集団訴訟に引き込む。訴訟への道は、善意で舗装されているわけだ。

第3次訴訟について、埼玉新聞が子供二人と自主避難(いわき市から埼玉)した原告女性(33)の発言を載せていた。ちなみに、旦那とは自主避難でもめて離婚したらしい。これまでも、同様の事例は数多く耳にしてきた。で、女性は次のように述べた。

「原発事故以降、苦しみながら子どもたちを育て、生き続けてきた。死にたいと追い詰められたこともあった。怒りをぶつけるのは訴訟しかないと思った」

おそらくウソは言っていないのだろう。部外者の想像を絶する、辛い日常生活を送ってきたに違いない。全てを国と東電のせいにしたい怒り、そうでもしなければやってられない苦悩、それらは偽りの無い本心であろう。訴訟に逃避するのも分かる気がする。

しかし、原発事故訴訟は女性らを救えるのだろうか。訴訟期間中は、国や東電に怒りをぶつけながら、呪いながら、それを生きがいに踏ん張れるかも知れない。暗い人生だが、それが生きる希望なら、無いよりはマシだ。でも、訴訟が終わったらどうする?。

自主避難者の賠償請求は十中八九認められない。上記の女性は、いわき市から埼玉県に移住した。いわき市は、避難区域住民の主要な移転先の一つだ。双葉町と楢葉町はいわき市に仮役場を設けている。女性に被害は無く、すなわち避難する根拠が無い。

敗訴すれば、当然のことながら女性の苦悩はさらに深まるだろう。より一層、国や東電や社会を恨み呪うだろう。別の理由で訴訟を起こしたり、プロ市民活動に傾倒したり、最悪、呪札にはしるなどして、陰鬱な人生を歩み続けるかもしれない。

では、勝訴すれば女性は救われるのか。勝訴しても、一人頭1100万円の賠償金額は大幅に減額されるだろう。もしも、もしも、満額解答を勝ち取ったとしても、はたして女性は納得出来るだろうか。怒りや恨みを捨てて、人生を前向きに進めるだろうか。

とてもそうは思えない。1100万円は大金だが、彼女の人生を買い戻せる金額ではない。離婚は解消されないし、相変わらず苦しい避難生活が続く中で、賠償金は確実に食い潰されていく。そして、彼女は嘆くだろう。「どうして私がこんな目に!」と。

そもそも、どうして彼女の様な自主避難者は苦しんでいるのか。国が原発を推進したから?。東電が福島原発事故を起こしたから?。それは違う。大本の原因ではあるが、直接的な原因は別にある。直接的な原因は、彼女らの放射能に対する無知だ。

必要以上に放射能を恐れ、不必要な移転を実行したから、しなくても済んだはずの離婚が生じ、余計な生活費もかかっている。それもこれも、放射能のリスクを科学的に考えず、無知が感情的に恐怖を増幅して、感情的な行動に走った結果だ。

彼女ら自主避難者の救済に本当に必要なのは、怒りの捌け口の用意や、一時しのぎの賠償金ではなく、放射能を正しく理解するための情報と教育だ。訴訟仲間らと決別し、いわき市に戻り、旦那と和解し、可能な限り元の生活を取り戻すことだ。

訴訟で自主避難者を救済することは出来ない。一時的に痛みを緩和させる効果はあるだろう。モルヒネみたいに。でも、薬で感覚を麻痺させても、本当の解決から遠ざかり、ますます苦しむだけだ。訴訟より教育、自主避難者の救済にはそれしかない。




埼玉:原発事故訴訟で追加提訴 県内や都内の自主避難者ら窮状訴え
http://www.saitama-np.co.jp/news/2015/08/26/05.html
 東京電力福島第1原発の事故により避難生活を余儀なくされ精神的苦痛を受けたとして、福島県からの避難者が国と東電を相手に、さいたま地裁に起こした損害賠償請求訴訟で、福島から避難している県内と東京都で暮らす7世帯22人が25日、慰謝料の一部など計2億4200万円を求めて追加提訴した。
" 第3次集団提訴で、原告は計20世帯68人、請求金額は計約8億2400万円に上った。
 原告は、原発事故の影響で、福島市、郡山市、いわき市などから県内と東京都に避難してきた0歳から71歳までの男女。双葉町から加須市に避難している1人を除いて、21人は避難区域外から自主的に避難しているため、自主避難者の扱いとなっている。"
" 訴状によると、原告は精神的損害に対する慰謝料などの一部、1人当たり1100万円の損害賠償を請求。国と東電の法的責任を明らかにすることなどを求めている。
 弁護団は、原告の大半を自主避難者が占めた理由に触れ「法的には区域外避難者も保護される対象になっているが、現実的には少額の避難費用が支払われただけ。唯一の住宅支援も打ち切られる方針が出た。自主避難者のお母さんたちが、本当に苦しみ、訴訟に加わるという動きが広まっている」と述べた。"
" 原告の一人で子ども2人とともにいわき市から県内に自主避難している女性(33)は、別居が理由で夫と離婚した経緯を説明。
 苦しい避難生活の実態と、国や東電に対する憤りを明らかにして、「原発事故以降、苦しみながら子どもたちを育て、生き続けてきた。死にたいと追い詰められたこともあった。怒りをぶつけるのは訴訟しかないと思った」と訴訟参加の理由を述べた。"







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テーマ:脱原発
ジャンル:政治・経済

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コメント

食材

避難者支援に少し関わった事が有ります。
対象は、福島県外から自主避難してきた人達でした。
特に暗いとか、怨念のオーラをまとっているようなことも無い、普通の人達でした。
私にはそう見えたということです。

ただ、放射線については頑なでしたね。愛知県に避難してましたが、食材は関西以西で採れた物しか食べないという人もいました。

それはちょっと…と思いましたが、何も言えませんでした。

まだ同じような調達を続けているのか、或いは更に西へ移住したのか、接点が無くなったので分かりません。
  1. 2015-09-08 07:46
  2. URL
  3. もらもら #Fldqm66o
  4. 編集

仰るとおりだと思いました。
悲しいかな,訴訟が今の生き甲斐になっているのかもしれませんね。
終わったらどーなるのか。人生が好転するなんてことないでしょうし,何かがポキっと折れてしまいかねない。
お子さんがいるなら,まだ子供の為ということでいけそうですけど。
洗脳状態でしょうから,解くのはなかなかたいへんでしょう。
  1. 2015-09-08 09:27
  2. URL
  3. とろ #-
  4. 編集

 最大の被害者は子供でしょう。 母親が放射脳であるお蔭で、父親と引き離されて、母親の放射能恐怖妄想に付き合わされるのですから。

 恐怖妄想に耽る人と、付き合うのは大人でも苦痛です。

 父親もそれが苦痛で離婚に応じたのでしょう。 しかし子供は逃れる事ができません。
 こんな幼少期にこんな恐怖体験をしたら、どんなふうに育つのか?

 大変心配です。
  1. 2015-09-08 12:42
  2. URL
  3. よもぎねこ #-
  4. 編集

私生まれて三ヶ月から喘息です

それ以外にも様々な病になっています
少し検査や治療の為に自ら浴びた放射線の量を考え真面目に単純計算したところ
驚く量の放射線を浴びています
原発作業員の年間に定められた量なぞ遥かに超えています
私はもう四十代ですが、様々な病は、放射線のせいではありません
シンチグラフィーという心臓検査をご存知でしょうか?
体内に放射線物質を注射し心臓に貯まった時その数値から心臓検査をします
あと、私は二十代の時福島第二原子力発電所の内部見学もしています
原子炉も見ています
でも放射線が原因での異常なぞ何ひとつありません
病は多いですが、持病であり放射線のせいではありません
  1. 2015-09-08 15:55
  2. URL
  3. プロ市民嫌い #e8dqewdg
  4. 編集

To もらもらさん

こんばんは。

普通の人ですよ。

このブログでは何度も書いてますが、極左プロ市民だって普段の感じはごく普通の一般人です。
しかも、もらもらさんは「味方」として接したわけですから、彼らの人当たりがより一層柔らかくなって当然ですよ。

何も言えなかったとのことですが、もし、もらもらさんが彼らに科学的な放射能説明を試みていたら、まるで汚物を見るような目で睨まれた可能性も高いだろうと思います。

  1. 2015-09-08 19:51
  2. URL
  3. no-risu #-
  4. 編集

To とろさん

こんばんは。

ある種の洗脳ですよね。まるでカルト宗教みたいですが、宗教は一応は神にすがれば精神的な安らぎを得られるので、不幸しか生み出さない反原発カルトは宗教よりたちが悪い。

困難ですが、この洗脳を解くことも、震災復興における重要課題ですから、諦めるわけにはいかないですね。

  1. 2015-09-08 19:58
  2. URL
  3. no-risu #-
  4. 編集

To よもぎねこさん

こんばんは。

そうですね、このエントリでは子供視点に欠けていました。

子供の受けた精神的苦痛は計り知れませんし、もし現段階で物心ついておらず母親に疑問を持てない団塊の子供なら、将来的に自主避難の意味を理解したときに、親に対してどの様な感情を抱くのか、非常に不安に思います。

まあ、放射脳教育で放射脳化するかもしれませんが、それはそれで不幸な人生になりそうです。かわいそうですね。

  1. 2015-09-08 20:03
  2. URL
  3. no-risu #-
  4. 編集

To プロ市民嫌いさん

こんばんは。

シンチグラフィーは知りませんでしたの、ググりました。いつか私もお世話になるかもしれませんね。

で、放射脳は自然界の放射能や医療放射能と、原発由来の放射能を別物と認識し拒絶します。原発の放射能は人工放射能だから体に悪い、とか(笑)。

なお、私は喘息ではありませんが、家族や友人には喘息持ちがいますので、プロ市民嫌いさんのご苦労はお察しします。

  1. 2015-09-08 20:10
  2. URL
  3. no-risu #-
  4. 編集

実際、自主避難区域は今もセシウムが多く降り注いでいますよ。関東の数百倍も。
数値で明らかです。
空間線量も震災前の何十倍。
年間一ミリの基準は無視ですか。
本当の専門家は危険を促してますし健康被害は10年後からです。
今も福島市の米から基準値越えが出ています。
暮していないから鬼のようなことが平気で書けるのです。
  1. 2015-10-19 23:49
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  3. 名無しクマー #-
  4. 編集

To 名無しさん

こんばんは。

このエントリとの関連性が不明です。

訴訟では自主避難者を救済できないとする本エントリに対して、あなたは何を言いたいのか。

  1. 2015-10-20 00:00
  2. URL
  3. no-risu #-
  4. 編集

>名無しクマーさん

数値のソースも出さずに妄言を語ってはイケナイよ。
  1. 2017-04-08 07:27
  2. URL
  3. 名無しクマー #-
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