2016-02-02 21:44

官製ビジネス大失敗、南アルプス市の杜撰な6次産業に唖然


民主党政権の政策中、「農林水産業の6次産業化」だけは唯一高く評価している。

6次産業化とは、1次産業から2次産業・3次産業に経営を広げ、新たな商品を生み出し付加価値を高めたり、新たな販路開拓などで経営拡大と安定化を目指す手法だ。2次・3次からの1次参入も含まれる。1次+2次+3次=6次産業、というわけだ。

例えば、コメをコメのまま売るよりも(1次)、粉にして団子を作って(2次)、自前の販売施設で売ると(3次)、最終的には約20倍の売上金額になると言われる(6次)。儲からない農家から儲かる農業法人に成長する、夢のビジネスプランだ。

ただ、言うのは簡単だが実際に成功するのは難しい。何せ、6次産業化とは、平たく言えばそこらの農家のおっちゃんおばちゃんを、会社の経営者に変身させる構想だ。普通に考えて、経営知識や資金の支援が無ければ高確率で失敗する。

食品業界の競争は過酷だ。大手菓子メーカーは、専用チームが市場調査と試作を繰り返して新商品を開発するが、それでも95%以上は生き残れずに市場から退場する。そういう世界に殴り込むわけで、生半可なことでは成功しない。

だから、民主党の6次化支援はまずソフト面の支援に力を入れた。農家を経営者として育て、実現可能な経営計画の策定支援に手厚い支援を用意した。行政が土台を支援して、将来的には自立する。官主導ではなく民主導、これが素晴らしい。

練り上げられた事業計画には国が法認定する制度を設け、事業段階に応じた各種支援が用意された。認定計画は2000を超え、数百の事業が軌道に乗り、数十の計画が大きな成功を収めていると聞く。官製ビジネスではこうはいかない。

また、成功が難しいことは最初から分かっているから、失敗する可能性も想定し、もし計画が頓挫して経営破綻しない範囲の事業計画が組まれる。のるかそるかの人生一大勝負ではなく、石橋を叩いて渡る様な堅実な計画となっている。

だが、これに一部の無能な自治体が目を付けた。限られた成功事例だけ見て、「時代は6次産業化!」「6次産業で町おこし!」などと舞い上がり、その本質を知らず学ばず国の制度を上辺だけ真似て、当然のごとく失敗する事例も相次いだ。

多くは目くじら立てるほどでもない小規模事業だが、ここにきて超大型案件破綻の一報が飛び込んできた。杜撰な官製6次産業で巨額の税金がぶっ飛んだ。山梨県は南アルプス市の観光農園「南アルプス完熟農園」である。



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完熟農園は、南アルプス市が全面的に支援して昨年6月に開園した。市は施設整備に8億円もの支援を行い、開園後の経営資金も拠出した。ところが、開園から僅か半年後の1月に破綻した。負債総額は5億とも7億とも報じられている。半年で。

ありえない話だと思った。

6次産業化の経営モデルにおいて、開始数年の赤字経営は織り込み済みでなければならない。いきなりボロ儲け出来るほど甘い世界ではないし、農林水産業は天候リスクがつきまとう。半年で破綻する事業計画など論外である。

南アルプス市の設備投資は無謀にすぎる。何度も言うが、6次産業化は失敗のリスクが高い事業だ。一歩ずつ地道に成長を積み重ね、ここぞという段階まで到達したら、清水の舞台から飛び降りる気持ちで大きな設備投資に挑むものだ。

いったい、どうしてこんな杜撰な計画がまかり通ったのか。どうやら、事業は「株式会社南アルプスプロデュース」なるコンサル会社が企画・運営しているらしい。とんだ三流コンサルである。そのコンサルによると、完熟農園の計画骨子は次の様なものだ。

・獲れたて完熟フルーツの直売
・地場農産品の直売
・体験観光ファーム
・オーナー農園制度
・農園レストラン&農園カフェ
・残った果実をピューレやジャムに加工販売


良く言えば王道メニューの網羅した計画、悪く言えばありふれたメニューを手当たり次第に取り込んだ、安易でつまらない計画だ。こんな新規性も独自性も無い計画に、初年度から年間利用者60万人、売上8億円を見込んでいた。アホすぎる。

そして、調べている内に驚愕の事実が判明した。何と、「株式会社南アルプスプロデュース」はプロの民間コンサルではなかった。南アルプス市の全額出資で設立、社長は金丸市長で社員は市の職員だった。事務所も市役所の中にある。

そりゃ失敗するわ(笑)。

笑い事ではない。農園に協力していた農家らは、破綻についてなにも知らされず、唐突に破綻が公表された。要するに、市は批判を恐れてぎりぎりまで隠していた。いきなり販路を絶たれれば、経営に深刻なダメージを受ける生産者も多いだろう。

しかも、完熟農園(=市)は供給安定と品揃え強化のため、つまり売上をアップさせるため、直前まで生産者に事業への参加を呼びかけていた。そんなことしても無駄だと分かっているのに、だ。これでは投資詐欺も同然ではないか。

金丸市長は、「多大な迷惑をおかけし、おわびします」と陳謝し、「当初からビジネスモデルが破綻していた」と説明したそうだ。当初から?、今がまだ当初だろ。市民の税金を10億円突っ込み、半年で負債7億円、「ゴメンw」で済む問題か。

さらに、金丸市長は「数年以内に集客力のある拠点を整備し、市の投資分を回収したい」と意気込みを語ったらしい。まだ設備投資に税金を注ぎ込むのか。投資で大損した人間が、「金を取り戻したい!」と頭に血を上らせている様なものだ。

誰かこの馬鹿を止めろ。そして責任を取らせよ。再建するなら現状の施設でやれ。金かけただけあって、かなり良くできている。あれなら黒字化は十分可能なはずで、わずか半年でギブアップして破たんしたのはお前らが無能だからだ。

余談。民主党の6次産業化支援策は自民党が無惨に破壊した。制度の優良部分はほとんど消失してしまった。自民党も口では6次産業化を訴えているが、元々少なかった予算額すら年々減額されている。ふざけんな。元に戻さんかい!。




読売:当初からモデル破綻…「完熟農園」が営業停止
http://www.yomiuri.co.jp/national/20160126-OYT1T50080.html
" 経営再建を目指していた山梨県南アルプス市の観光農園「南アルプス完熟農園」の運営会社「南アルプスプロデュース」が25日、資金難のため、営業を停止した。
 筆頭株主の同市は債権者として、近く甲府地裁に対し、破産手続き開始を申し立てるとしている。
 同市の金丸一元市長が同日、記者会見を開き、事情を説明した。"
 それによると、運営会社の経営状況が改善しておらず、これまでに1億5000万円の赤字が発生している。そのため、運転資金が底をつき、従業員への給与や商品の卸売代金などが支払えない見通しとなり、市や金融機関から新たな融資を望めないことから、営業停止を決めたという。負債総額は、少なくとも5億5000万円に上るという。
 完熟農園は6次産業化の拠点として、市が整備費など約8億円を負担し、昨年6月にオープン。しかし、主力と見込んでいた果樹で、天候不順のため集荷が落ち込み、予想の売り上げを大きく下回るなどオープン当初から苦戦。市が急きょ、5000万円の融資を行い、外部監査の導入や、経営刷新委員会の設置で、抜本的な経営体制の見直しを図っていたが、収益の改善は見られなかった。
 金丸市長は会見で、「市民に多大な迷惑をおかけし、おわびします」と陳謝。その上で「当初からビジネスモデルが破綻していた。融資の見込みがない中で、どこかで止血しないと、(負債が)雪だるま式に増えていくと判断し、(破産申請を)決めた」と説明した。
 一方、完熟農園の跡地利用については、6次産業化の拠点として活用する考えを強調。中部横断道の南アルプスインターチェンジ近くと好立地のため、金丸市長は「物流、流通関係からすでに引き合いがある」と明かし、数年以内に集客力のある拠点を整備し、市の投資分を回収したいとした。
 また、完熟農園の入り口には25日、営業停止を知らせる貼り紙があった。市内の卸売業者は24日夕に約20万円分の青果物を搬入したばかりといい、「経営が傾いているのは知っていたが、急で驚いた。60万円近くの売掛金があるが、回収できるだろうか」と不安げに話した。




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テーマ:農政
ジャンル:政治・経済

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