2016-10-28 21:15

大川小学校を悪者にすべきではない


東日本大震災が発生したとき、宮城県石巻市立大川小学校には11人の教師がいた。大川小学校は海から4キロ離れた場所にあり、ハザードマップでは津波到達地域から除外されていた。だから、津波を前提とした避難訓練も行われていなかった。

大川小学校には、児童以外に近隣住民も避難していた。津波避難場所に指定されていたからだ。が、想像を超える高さの津波が発生し、それらの人々はほぼ全滅した。11人いた教師も10人が死亡し、残った1人は精神を壊し引き籠もっている。

これら犠牲者に対し、「津波は予見できた」、「愚かだから死んだ」、「自業自得だ」などと批判するのは理解し難いだろう。「お前が津波を予見しなかったから他の人も死んだ!」、「この人殺しめ!」と、犠牲者や関係者に謝罪と賠償を求める人も居まい。

普通は。しかし、現実はそう単純ではないらしい。

大川小では70人あまりの児童も津波の犠牲になったが、犠牲者の内の3割ほどの親達が、「我が子が死んだのは教師らが津波を予見しなかったからだ」、「当時の状況・真相を説明しろ」等と訴訟を起こしていた。賠償請求額はおよそ23億円だ。

先日、仙台地裁が判決を下した。「津波は予見できたはずだから学校と教師が悪い、生徒の犠牲はお前らのせいである、賠償金14億円を支払うべし」と。これを聞いて、みなさんはどう思われるだろうか。no-risuは、「正しくない」と感じる。

遺族側を一方的に批判する気は無い。「子を亡くした苦しみを理解出来る」とは言えないが、想像することは出来る。他人に責任を求めたり、死に何かしらの意味を見いだすことで、苦しみが緩和するのかもしれない。そうせずにはいられないのかもしれない。

だが、それでも、犠牲になった教師らに責任を被せ、裁判所に断罪させ、巨額の賠償金を支払わせる行為は、何度考えても「正しくない」と感じる。教師も児童も、どちらも同じ震災の犠牲者で、「どっちが悪い!」何て議論は間違っている。

後付けでなら何とでも言える。仙台地裁は「教師は津波を予見できた」としたが、それは可能性の話にすぎない。そんなことを言い出せば、「児童の親は、教師が津波を予見できないことを予見できたはずである、よって親が悪い」なんて理屈も成り立つ。

勝訴判決を受けて、原告が掲げた紙には、「勝訴!子供たちの声が届いた!」と書かれていた。たぶん、子供達はこんな裁判を望んでいない。普通に考えれば、親と教師が泥沼のケンカをする姿を見せられて、それに喜ぶ子供は居ないと思う。

報道を眺めていると、原告勝訴の判決もあってか、「児童と親は大川小学校の被害者」、「学校と教師が悪い」のニュアンスが強い。ズバリその様に書かれている記事も見る。それが「遺族に寄り添う報道でございます」と言わんばかりだ。

でも、それは違うでしょ。どちらも震災の被害者だ。裁判で負けたからといって、大川小学校と教師を悪者にするべきではない。




NHK:大川小学校の津波訴訟 石巻市などに14億円余の賠償命令
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161026/k10010744931000.html
" 東日本大震災の津波で犠牲になった宮城県石巻市の大川小学校の児童の遺族が訴えた裁判で、仙台地方裁判所は「市の広報車が避難を呼びかけたのを教員らが聞いた時点で、津波が到達する危険を予測できた」と指摘して、石巻市などに対し原告全員に14億円余りの賠償を支払うよう命じました。
 石巻市の大川小学校は、学校の管理下としては震災で最も多い74人の児童が津波の犠牲になり、このうち23人の児童の遺族は石巻市と宮城県に対し1人当たり1億円、合わせて23億円の賠償を求める訴えを起こしました。
 裁判では海岸からおよそ4キロ離れた小学校まで津波が来ることを学校側が予測できたかどうかなどが大きな争点となりました。
 26日の判決で、仙台地方裁判所の高宮健二裁判長は、石巻市と宮城県に対し原告全員に合わせて14億2600万円余りの賠償を支払うよう命じました。
判決では「津波が襲ってくる7分前の遅くとも午後3時半ごろまでには、石巻市の広報車が津波が松林を越えてきていることを告げながら避難を呼びかけたのを、教員らが聞いていたと認められ、この時点で小学校に津波が到達する危険を予測できた」と指摘しました。そのうえで、「教員らが校庭からの移動先として目指した川沿いの交差点の標高は7メートル余りしかなく、避難場所としては不適当だった。一方で、近くの裏山には小走りで1分程度で移動できたうえ、過去に学習の場などで児童も登っていた場所で、避難するのに具体的支障はなく、避難についての過失があった」と指摘しました。
 また、裁判所は「教員らはみずからの判断で自主的に避難することができない児童らを可能なかぎり避難させるべき義務を負い、多少の混乱をいとわずに児童らをせかし、小走りで移動させてでも早期の避難を最優先すべきだった」という判断を示しました。
 大川小学校は当時、津波の避難場所に指定されていて、宮城、岩手、福島の3県の教育委員会によりますと、震災をめぐる裁判で、避難場所に指定された学校からさらに避難することについて過失が認められたのは初めてです。・・・・・・"





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コメント

教師の錯誤

教師が悪いと今さら非難しても始まりませんが、私には先生方に対する疑問があります。なぜさっさと裏山に登らなかったのかという。

思うに先生方は列を乱さず粛々とした行動を求めたのではないか。様式美です。

津波が来る!と判断されたとき、先生方は野性的判断が出来なかったのだと思われます。条件反射というか運動能力というか、咄嗟の判断が働かず「教育的見地」というべき正しい団体行動でしか判断できなかった。「津波てんでんこ」の精神が働かなかった。

マクドナルドは状況を読まずに型通りの接客マニュアルでしか対応能力がないと笑いものにされるときがあります。日教組にもその弊害はなかったのかと訝しく思います。大川小学校自体が避難場所だったから「安全」と錯誤したなら先生方の認識は誤りだと言うべきです。
  1. 2016-11-01 09:02
  2. URL
  3. 相模 #-
  4. 編集

To 相模さん

こんばんは。

>なぜさっさと裏山に登らなかったのかと。  

1.当該地区は津波到達が予想されない地区だった。
2.むしろ津波からの避難場所だった。
3.11人の教師が協議した結果、留まるという結論になった。
4.裏山に逃げるのが難しい高齢者ら近隣住民もいた。
5.裏山は土砂崩れ警戒区域だった。
6.津波襲来の防災無線を聞いた後は直ちに高台に向かったが間に合わなかった(目的地に着いたとしても津波にやられていた)。

よく教師批判する側が持ち出す「津波てんでんこの精神」ですが、こんなもの全く関係ないですよ。津波てんでんこは、「津波が来ると分かったら誰にも頼らず自分で判断して逃げろ」ってもので、教師の責任を問う根拠になりえません。日教組の影響を疑うのも、言い掛かりにすぎると思いますよ。

  1. 2016-11-01 20:25
  2. URL
  3. no-risu #-
  4. 編集

教員も万能ではありませんから

結果論で助かったかも、肝心の教員の方々も、11人中10の方々が亡くなっている以上、一部のご遺族の気持ちはともかく、では最善とは?
答えなど出ません、あそういえば、日本共産党の市議さんは、上告に賛成しましたね。
立場が変われば、態度も変わる、当たり前ですが。

日本共産党員プロバガンダ工作員

http://otokogumdoronikazu0000000.blog.jp/

過激派崩れカルト偽仏教徒しばき隊

http://wwwjtheravadanetsatoutesuroushibuykusyogaisyaombudsman0000.dreamlog.jp/

菅直人信者自治労上がり自称無所属本当は組織候補

http://sesesekurokawashigeru.blog.jp/
  1. 2016-11-02 16:48
  2. URL
  3. 政界ウォッチャー三十年 #WO.TtlzE
  4. 編集

To 政界ウォッチャー三十年さん

こんばんは。

控訴に賛成した共産党議員は、情報を精査した結果「教師にすべての責任を負わせるのは酷すぎる」というものでした。私もそう思います。共産党と言えども、いろんな人がいるわけで、私は素直に喜ばしいと歓迎しています。

是是非非、ってやつですね。
  1. 2016-11-02 20:33
  2. URL
  3. no-risu #-
  4. 編集

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